私の好きな人は駐在さん
大理石のような、石で作られた床のエントランス。
そこの片隅一角に何脚かソファが置かれており、何人かそこで休憩していたり、誰かと待ち合わせしていたり、様々な用途があると見受けられる人がそこに座っていた。
その中に、外国人が「オウ!ジャパニーズ!」と喜びそうなほど、日本人女性の象徴とも言っても過言ではないほど、漆黒の髪をサイドで緩くまとめた後頭部が見えた。ーー由紀である。
私は、小走りに駆け出し、由紀のもとへ駆け寄った。
由紀の後頭部めがけて、
「由紀!遅くなってごめん!お待たせっ!」
と、声を投げかけた。
美しい黒髪の後頭部が、ゆっくりと回転して視界から消え、見覚えのある由紀の顔が現れた。
「お疲れ!じゃあ、早速行こっか。」
そういって、由紀は右手を軽く上げながら、ソファーから立ち上がった。