私の好きな人は駐在さん


「おおぉう、橘くん!珍しいねぇ!」

「本当ですね。橘さんのイメージとは違った衣装で新鮮ですよ!」


ドアを開けると、そこはすっかりパーティー気分満載だった。

とはいえ、会議室を煌びやかなモールやオーナメントで飾り付けしただけなので、所々に会社感が顔を覗かせているところがあるため、私としては完全に仮装パーティーに入り込めそうな気がしなかった。

しかし、その場にいる人達はすっかり出来上がっている。
もはやパーティー感を駆り立てる要素の一部となっているのだ。

「いえいえ……そんなことないですよ。後輩に無理やり着させられただけなので……。」
私はヘラヘラしながら、恥ずかしさをごまかし、なんとか周りの反応に返答した。

「いやはや、いーよ!いい!!」

デスクは『パーティー』という雰囲気に既に酔ってしまっているかのごとく、上機嫌ではやし立てた。

確かに、私のキャラ的に、こんな格好は考えられない。
昔から人前に出るのは苦手だし、目立つことも嫌い。
全体的に地味めだし、服装もパステルカラーのカーディガンや、無地のものを着たりと落ち着いたものを好んで着ている。
25歳という年齢の割には、少し飾り気のない外見かもしれない。
昔から自分に自信がなかったがために、着飾りたくない、というよりも着飾る自信がなかったのだ。


< 5 / 67 >

この作品をシェア

pagetop