私の好きな人は駐在さん

私は、息をのんだ。

色の白い、透き通った肌の由紀は、純白のドレスをきて、これ以上光り輝くことなどできないほどのまばゆい光を帯びていた。
長い髪をきれいに束ねて、美しいデコルテには光り輝くネックレス、
頭上には可愛らしいティアラが。
シンプルなデザインのドレスだけれど、それがまたより一層由紀の美しさを引き立て、またその美しさがドレスを引き立たせるという相互作用にただただ感嘆するだけだった。

「由紀……本当にきれい。本当に、今まで見た、何よりも美しい。」
私は涙ぐみながら、言った。
「何言ってんの。おおげさね。」
そういって由紀はいつもと同じトーンで静かに笑った。

「本当よ。由紀。本当におめでとう。うんと幸せになってね。」
私は由紀のもとに歩み寄って、白い手袋をはめた由紀の手を取っていった。

「ありがとう。」
少し恥ずかしげに微笑みながら、そう言った由紀のその姿は何にもたとえがたいほど美しかった。


「では、花嫁様、そろそろ。」
式場のスタッフの人が呼びに入ったところで、
「じゃあ、行ってくる。また、あとでね。」
そういって、由紀はスタッフさんに付き添われてドレスの裾をもちあげながらゆっくりとついて行った。


美しいとは、こういう時にいうのだなと本気で思った。
結婚するということは、女の人をこの上なく美しくする。
素晴らしい日。
一生に一度のかけがえのない日なのだと、私はあの凛とした由紀の姿をみて強く感じたのだった。






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