私の好きな人は駐在さん


式は終始なごやかに進み、出てくる食べ物は美味しいし、由紀はきれいだし、二人はお似合いだし、私はすっかり幸せに浸かりきっていた。
結婚っていいなぁ、私も早く結婚したいなぁ、なんて。
そう考えた時に、一番に出てくるのは、やっぱり渡部さんの姿だった。
二人で一緒に暮らしたら、楽しいだろうなぁ。きっと、穏やかなで、なにか取り立ててあるわけじゃないけれど、安心感に包まれた、幸せな生活が待ってるんだろうなぁ、なんて思ったり。
頭の中で膨らむ妄想は際限を知らず、どんどん膨らんでいく一方である。

「かおる。かおるってば。」
バラ色の妄想から、私を連れ戻したのは、由紀だった。
純白のドレスに包まれた花嫁さんが、私の目の前に立ちはだかった。


「写真撮るんだけど、かおるも、ほら、あっち。並んで頂戴?」
指差された方を見ると、いつの間にやら出席者がみんな並んでいた。

「お、オッケイ!!」
妄想してたから全然気づかなかった…。
一人恥ずかしくなりながら、いつもより高めのヒールで必死に走って行った。


「じゃぁ、撮りますよー!みんな、リラックス!!はーい!笑ってー!」
そういって、カメラを持った男性がみんなに掛け声をかけて、指示を出した。

「オッケー!みんな入ってまーす!じゃぁ行きますよー!はい、チーズ!!!」




――この上ない理想の夫婦といってもいいくらい、まぶしく美しい夫婦を真ん中に携え、皆が幸せそうな表情で写りこんだ写真は、私の宝物になった。



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