私の好きな人は駐在さん
静かにおしゃれな音楽が店内に流れ、その中で皆が談笑する声を背に浴びながら、私は店を先に後にした。
先に出たとはいえ、もう11時を軽く回っていた。
今日も電車で帰らなければならない。
でも、もし終電がもう出ていたらタクシーで帰ろう。十分タクシーでも帰れる距離である。
あー!ほんとに幸せそうだったなぁ……うらやましい!
お酒にほんのり酔いつつ、あの雰囲気にもすっかり酔わされていた。
ふんふん、と鼻歌を歌いながら、くらい路地をカツカツとヒールの音を響かせながら歩く。
後ろに、一人の人影が、店を出てからずっとついてきていたことに気付かないまま――。