いつか、眠りにつく日
「孝夫さん、こうして見ているだけでは余計に悲しくないですか?」
思わずそう尋ねた。

 私だったら、私だったら耐えられない。

「悲しいですよ」
すぐに孝夫は答えた。立ち上がって背伸びをする。
「悲しいけれど、妻や空に笑顔が戻るのは、その悲しみを消すくらいうれしいんです」

「ふたりとも元気そう」
もう一度振り返って私は言った。

「ええ、それが今の生きがいです・・・ってもう死んでいますけどね」
そう言いながら、孝夫の視線が駐車場に向く。

 同じようにそっちを向くと、ウィンカーをだして白いセダンが駐車しているところだった。

< 100 / 264 >

この作品をシェア

pagetop