いつか、眠りにつく日
 どれくらい泣いたのだろう。

 どちらからともなく身体を離すと、なぜか私たちは笑いあった。

「不思議」
栞が制服の肩袖で涙をぬぐうと笑顔で言った。

「何が?」
私もそれにならってぬぐいながら笑う。

「何がケンカの原因かも忘れかけてる」

「ふふ、そうだね。なんでケンカしたんだろう」

「うーん。たぶん、どうでもいいつまらないことだよ」

 栞は笑顔がよく似合う。

___ああ

 栞の身体から発する光は徐々に弱くなってきていた。さりげなく自分の両手を確認すると、やはり未練は消化されかけているようだった。

「栞、もうすぐ私の姿は見えなくなるの」

 

 


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