いつか、眠りにつく日
 涼太はそのときはじめて私の存在に気づいたように、少し驚いた顔をして、そしてうつむいた。

「お姉ちゃんも同じだよ。周りの人からは見えなくなる魔法をかけられちゃったの」

 唇をかみしめながら涼太が視線を合わせた。

「魔法?」

「そう、悪いやつがいてね。そいつがお姉ちゃんと涼太君の姿を消しちゃったの。だけど、きっとすぐにこの魔法もとけるよ。そうしたら、またまさくんたちと遊べるよ」

「・・・ほんとうに?」

「うん。それまではお姉ちゃんたちは透明人間なんだよ。あとでまさくんたちに自慢できちゃうんだから」

 コクリとうなずく涼太の頭をなでる。嘘をついた罪悪感が残る。

 こんなに小さいのに、彼はこれから自分の未練を解消して消えてしまう。

 思わず涙が出そうになって、私は立ち上がった。

「涼太君、先生はどこ?」




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