いつか、眠りにつく日
「未練の解消をしたの?」
恭子の目を見て問う。

「彼を殺そうと思った。それが正しいことだ、って・・・。でも、布団に手を伸ばしたとき、聞こえたの」

「聞こえた?」

 恭子は言葉を止めると、苦しそうに顔をゆがめた。

「聞こえたのは、彼の泣き声だった。そう、彼は泣いていたの。布団にくるまって、声を押し殺しながら号泣していたの。『ごめんなぁ、ごめんなぁ』って、泣くの。何度も何度も泣いて謝るの」

 泣いているかと思ったけれど、恭子は目を閉じて微笑んでいた。それは静かな強さに思えた。

「結局、私は殺せずにその場を後にした。それから期限まで、私の身体は光り続けたけれど何もできなかった。案内人は何度も説得してくれたけれど、どうしてもできなかった。たとえ地縛霊になっても、自分の意思で彼を殺すことなんてできなかった・・・。まだ彼を好きなんだと知ってしまったから」

「そんな・・・」









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