いつか、眠りにつく日
「ちょっと遅いかな。さっき、この子を襲いそうになったもの」
冗談めかして恭子が言うと、再びクロは私を少しだけ見て、
「そっか」
と興味なさげに言った。

 まだ怒っているのか・・・。

クロは私の存在なんてないようなそぶりで、
「恭子、今日は大事な話がある」
と声をかけた。

「何?改まって」

「今日でお前が死んでから20年だ」

 恭子の目が大きく見開いた。何か声を出そうとしているが、動揺の方が大きいらしく、口からは白い息が出るだけだった。

「20年ていうと、人間で言うと『時効』にあたると言ったことあるよな」

 糸の切れた操り人形みたく、コクンとうなずく。

「今までよくがんばったな。お前の苦しみもこれで終わる」
クロが恭子の頭に手を置く。




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