いつか、眠りにつく日
「じゃあ」
ようやく恭子が言葉を出した。声が震えているのは寒さからか動揺からなのか。
「これで解放・・・?」

「そうだ。長い間、苦しい気持ちだっただろう?今からお前を解放する」

「ああ・・・」
恭子の目から涙があふれ出た。

「恭子さん、行っちゃうの?」

 恭子はくしゃくしゃになった顔で私を見た。
「そうみたい。でもこれで・・・やっと、やっと穏やかな気持ちになれる」

「そう・・・良かったね」
気づくと私も泣いていた。それは彼女の喜びを感じたからではなく、20年も苦しい想いを持ち続けていたことを憂いてのことだった。

 恭子はクロを見上げると微笑んだ。
「あなたが、あなたが私の精気を吸い取ってくれていたから。だから、ここまで来れました。本当にありがとう」




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