いつか、眠りにつく日
「俺は関係ない。お前が未練を解消しなかったことは、今でも俺の成績に響いてるんだからな」

 その言い方は、とてもやさしく聞こえた。クロは、言葉は悪いがやさしい人なんだ。

___それなのに、私は


「準備はいいか?」

 クロの言葉に恭子がこちらを向く。精神が安定したのか、息も白くない。
「蛍さん。先に行くね。色々聞いてくれてありがとう」

 首を横に振った。言葉なんて意味がない。

 涙を流しながら笑ってみせると、彼女も大きくうなずいた。

「よし、行くぞ」
 クロが右手を高く挙げて、何やらつぶやくとまばゆい光が恭子を包んだ。まぶしくて目を開けていられないほど。

 その光に包まれた恭子がだんだんと薄くなってゆく。

「ありがとう」

 その言葉はまるで風のように私を通り過ぎてゆく。



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