いつか、眠りにつく日
 光が急速に1点に集まったかと思うと、はじけるようにして消えた。

 もう、そこには恭子の姿はなかった。

「ああ・・・。良かった、良かったね恭子さん」
こぼれる涙をぬぐうと、もういないその姿に私は声をかけた。

 

 ふと、クロの視線に気づく。

___どうしよう

「あ、あのさ」

「じゃ、またな」
クロがそっけなく背中を向けた。

「待って、待ってよ」
クロが振り向くのと同時に私は飛びついた。

「バ、バカ。お前」
体勢が不安定だったのだろう。ふたりして地面に派手に転ぶ。

「あ、ごめん」
何やってんだ、私は。これでは逆効果ではないか!クロは、舌打ちをしながら上半身だけ起こすと、ひと息大きく吸い、私を指差した。
「お前はバカか。案内人への暴力はご法度なんだぞ」



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