いつか、眠りにつく日
「なによ!せっかくやさしい気持ちになれたのにさ」
不平を口にしながらも、笑顔になる。

「人間っていうのは、本当に変な生き物だな」
そう言ってクロも笑った。


 校舎を出ると、まぶしい光に目がくらむ。

 昼を過ぎたせいからか、先ほどまでのにぎやかな掛け声やざわめきはなかった。

 校舎のつくる影、緑の木々、水飲み場、すべてが美しく感じる。

 もう2度と見ることができなくなるであろう、それらが織り成す風景を愛おしく思う。

 感傷的になりそうで、早足でクロに追いつくと並んで歩いた。

「なんだか不思議。この2週間ちょっとの出来事は夢みたいに思える」

「案外夢なのかもな」





 

 


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