いつか、眠りにつく日
「こんなのってないよ・・・。さよならさえ言えてないのに」

 もっと蓮といたかったのに。

 未練解消なんて、余計に未練がつのるだけだよ・・・。

 アスファルトに涙の粒が、雨のしずくのようにシミを作っていた。


ピッ ピッ ピッ ピッ

____まただ

 あの電子音が聞こえる。

「この音なに?」

 クロを見上げる。

「音?」

「ほら、ピッピッって聞こえるでしょう?」

 クロは耳をすますようにしばらく黙っていたが、
「何にも聞こえないぞ」
と言った。

「え?そんなはずは・・・」
そう言いながら立ち上がると、不思議と音は聞こえなくなっていた。


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