いつか、眠りにつく日
「俺の仕事は、死んだ人間をあっちの世界に連れてゆくことだ。しかし、人間っていうのはやっかいで、『死んでも死に切れない』っていう変な感情や想いを抱えているヤツが多い」

「ふうん。未練、ってやつかな」

「そう。だから俺の仕事は、人間の抱えるその未練を解消する手伝いをするわけだ」

「それが解消できれば、あっちの世界に行くことができるんだね」

「そういうこと」

 乗客たちは疲れた顔をして携帯をいじっていたり、眠りこけている。そんな日常の風景に自分が存在していない事にまだ現実感がわかない。

「未練って言われても、私よく分からないよ。数えだしたらきりがないもん。まぁ、ひとつずつ解決していくしかないか」

「あのなあ」
クロがのぞき込むようにして言う。
「普通は死んだらすぐに未練解消にとりかかるんだ。でもお前は1ヶ月も眠りこけてたんだぜ?あと19日しか時間がない。悠長にやってる暇なんてない」

「それって四十九日ってやつ?そういうのは人間界と一緒なんだ?」

 







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