いつか、眠りにつく日
 クロを振り向く。

「お別れ・・・しなくちゃいけないんだ?」

 なんとかして連れて行ってもらえないか、と思ったがクロは無情にうなずく。

「ひとつだけ、教えておく。お前はもう一般病棟に移っている。安心しろ、身体に傷はほとんどないし、後遺症もない」

「ずるいじゃん。さっきは脅しておいて」
唇をかんでにらみつける。

「それでも生きる方を選んだのはお前だ」

「ほんと、クロっていけすかない」

「それで結構。本望だ」
そう言うと右手を差し出す。

 涙でゆがんだ視界でその手を見つめる。

「お別れだ」
その言葉につられるように右手を握る。

 ひんやりと冷たい。

「クロ、ありがとう」

「フン。お前みたいにやっかいなのはこりごりだ」


 

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