いつか、眠りにつく日
「だからそう言ってるだろ。ま、お前の場合は3つとも人間相手の未練だからまだマシだがな」
そっけないやつだ。

 すねた顔をして窓からの景色を眺める。


___私は、死ぬ瞬間何を考えたのだろう?



「よし、降りるぞ」
クロがさっさとドアをすり抜けて降りてゆく。

 あわてて後を追いかけると、バス代を払おうとしている老婦人にぶつかりそうになる。
「あ、すみま・・・」
謝るそばから身体はすり抜けて、ぶざまにうつぶせで倒れこむ。
「ムギュッ」

 次々と降りる人が私の身体の上を歩いて行った。


 すり抜けてゆくので痛くはない。

 それでもなぜか、私は泣きそうになった。





 
 


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