いつか、眠りにつく日
「たとえばさ、『おばあちゃんともう1度お話したい』っていう未練だったらどうすんの?向こうから私は見えないわけっしょ」

 前を歩くクロが振り返りながら、
「大丈夫。願いをかなえる時だけは、相手の前に姿を現せるんだ」
と言った。

 相手の前に姿を見せられる?

「それじゃあパニックになっちゃうっしょ?死んだ人間が目の前に現れるなんてホラーじゃん」

「まあな。でも未練が解消されちまえば、相手の記憶からお前のことはじきに消えてなくなる」

「へぇ」

 街の気温がどんどん上がっているのが分かった。歩く人たちもだるそうな顔をかくそうともせず進んでゆく。



< 30 / 264 >

この作品をシェア

pagetop