いつか、眠りにつく日
「たしかにそうだね。何もない空間に向かって話しだしたら周りはビビるよね」

「中には精神科に連れて行かれそうになった人間もいたからな」

 なつかしむような顔をしてクロは微笑んだ。

「クロはさ、もう何年も案内人の仕事をしているの?」
ふと疑問に思って、私は尋ねた。

「う~ん」
クロは腕を組んで眉をひそめた。
「そんなに長くはないな。俺より長年やってるやつも多いからな」

「そうなんだ」

「まぁ、200年くらいだな」

「ぶ」
思わずズッコケそうになる。
「めっちゃ長いじゃん」

「人間のものさしで計るな。まだまだイケメンの若手だ」

 相手にするのもバカらしいので、そろそろ病室へ向かうことにした。



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