いつか、眠りにつく日
 3階についてエレベーターから降りると、私は大きくため息をついた。

 不思議な気分だ。

 自分が死ぬ瞬間に思い描いた未練を、自分自身の手で解消しようとしている。しかも全部終わったときが私の『本当に死』を意味しているなんて。

 ナースステーションのカウンターに両肘を乗せてみる。

「あ、平石さんだ」
ステーションの中で何か書き物をしているのは、祖母である福嶋タキの担当の看護師だった。

「こんにちは~」
にこやかに挨拶をしてみせるが、当然のごとく平石は私の声に気づかなかった。

「おーい。おーい」

 叫んでみるが、心底むなしい。

「いい加減、現実を見極めなきゃね」
鼻からため息をこぼす。





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