いつか、眠りにつく日
「森野蛍です」

 老婦人は、おかしそうに笑うと、
「もりのほたる、かい?おもしろい名前じゃな。わしは竹本トシっていうんじゃ」
と目を細めた。

「あの・・・」

「ああ、『何で見えるか?』じゃな。これは昔から。もうず~っと昔からいろんな幽霊を見てきたんじゃ。最近は歳のせいであまり見えなくなってきてたが、何年かぶりに見ることができたわい」

「私、成仏するために未練を解消しに来たんです」
横に並ぶように手すりの方へ歩くと、目線は景色に向けたまま私は言った。

「未練解消・・・か。昔よく話をした霊たちもそんなことを言っておったな。たったひとつの未練がなかなか見つからんで困っておった」

「え?未練は3つある、って言われましたけど」

 竹本トシは「へ?」と眉をひそめ、
「お前さんの案内人が3つって言ったのかい?」
と逆に聞き返した。





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