いつか、眠りにつく日
「その気持ちだけで十分だから」

 それでも祖母には受け取る気はないようだった。微笑んでただ座っているだけだった。

 クロを振り返ると、
「もらっとけ。どうせ現実世界ではそれは残るから」
と、うなずいている。

「うん、じゃあ・・・もらうね」
鏡を胸の前で抱き、頭を下げた。

「よかった。おばあちゃんうれしいよ」

 そう言うと、祖母は顔を覆って泣き出した。静かに震える肩に手を置く。

「おばあちゃんありがとう、私大切にするから」
涙をこらえて笑って見せると、祖母は何度もうなずいた。

 涙をぬぐった祖母が私を見ると、驚いた顔をして目を見開いた。
「蛍ちゃん・・・」

「え?」

 祖母の視線は私の身体にあった。

 自分の身体から発する光がさっきより弱くなっていた。





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