いつか、眠りにつく日
 クロがそばに来て口を開く。
「もうたくさん話をしたろ。ひとつめの未練が解消されようとしているんだ」

「ダメ!私もっと話がしたい」
 もうこれで終わりなんて悲しすぎる。
 祖母はクロの姿が見えていないのだろう。きょとんとした顔をしている。祖母の身体から発する光も薄まってゆく。

「おばあちゃん、私、私・・・」

「蛍ちゃん・・・消えてしまうのかい?」

 どんどん光は鈍く、薄くなってゆくようだ。それとともに祖母から見える私が薄くなっているのだろう。

「おばあちゃん、聞いて。私、大丈夫だから。どうかいつまでもいつまでも元気で長生きしてね」

「ああ、蛍ちゃん・・・」
祖母が私の両手を握る。強く、強く。

「私、もう行かなくちゃ・・・。おばあちゃんごめんね。お父さんやお母さんにもどうか伝えて。私、私・・・」

「ああ・・・消えてしまった」
祖母がつぶやくのと同時に、握っていた手は床にすとんと落ちた。





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