いつか、眠りにつく日
「だ、誰!?」
 声が裏返るのもかまわず自然に声が出ていた。

 煙がまだ相手の姿をぼやけさせていてよく見えない。

「森野蛍だな?」

 低音の声だけが、煙の向こうから聞こえるよう。

「誰・・・」声が思わず弱くなっていることに気づき、
「誰なのよ!」と怒鳴るように言い返した。

「ホタル、って変な名前だな。最近はこういうのが流行ってんのか?」

 煙はさらに薄くなり、同時に相手の姿が見えてくる。

「誰なの?」
自分のボキャブラリーのなさを呪いながらも、私は同じことばかり尋ねていた。

「俺はお前の案内人。名前なんてものはない」

 煙はほとんどなくなった。

 ドアにもたれるように立つ男は、真っ黒いスーツを着ていた。

___20代くらいか?





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