いつか、眠りにつく日
 5分ほど歩いて校門が見えてくると、あたりを警戒して見回す。

 クロには言ってなかったが、私は自分が死ぬ瞬間、最後に想ったであろう未練に心当たりがある。これまでも何度も悩んで、そのたびにあきらめていたこと。

 それは、同じクラスの大高蓮に想いを伝える事だった。

 大高蓮とは中学で同じクラスになって以来、仲の良い男友達だった。いや、『仲の良い男友達』を私は演じてきたのかもしれない。

 本当は初めて会った日から、好きだった。

 でも、想いを伝えるといつかはそばにいられなくなる。それは玉砕してもうまくいっても同じこと。愛は永遠ではないことを私は知っているから。
 だから、『友達』でいることを私は選んだ。友情は愛よりも深く長い・・・そう思い込ませていた。

 それでも、蓮が笑うたびに想いは揺れた。

 じゃれついて触れられるたびに、心は揺れた。

 彼の存在はどんどん大きくなって、私は小さくなっていった。



< 75 / 264 >

この作品をシェア

pagetop