いつか、眠りにつく日
 校門まで戻ってくると、そこにクロが立っていた。

 正直、そんな気がしてた。

「大高蓮には会えたのか?」

 やはり彼が未練の対象なのか、という思いに苦しくなる。

「遠くから見てただけ」
それだけ言うと、クロのそばを抜けて歩き出す。今は、あれこれ言われたくなかった。

「そうか」
クロもそれ以上言わず、少し後ろをついてきた。

 バス停に戻ってくると、ベンチに座る。

「大高蓮との未練解消は難しいのか?」
クロが隣に座り、前を向いたまま尋ねる。

「うん。とてもできそうにない」

 それで察したのか、クロはまた「そうか」とつぶやいた。

「ねえクロ、人が最後の瞬間に思う後悔が未練でしょ?でも、それはかなわないから未練って呼ぶんじゃないのかな。もう一度それを後悔のないようにやれ、って言われても、それは本当に正しいことなのかな?」

 蓮に告白をしたい、と最後に思ったとしても、それは本当の望みではないと思った。もしもダメだった場合、彼の困った顔が最後の記憶になると思うから。



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