いつか、眠りにつく日
 振り向いた目に飛び込んできたのは、ソファに座っている小さな女の子だった。

「私の子供です」
まぶしそうに目を細めながら孝夫が言う。

「かわいい」
素直にそう言った。女の子らしいピンクのスカートをはいて、大きすぎるソファの上で歌をうたいだしている。

「私の未練です」

「え?」

 孝夫は口だけは微笑んだままで、遠くを見つめる。その目は笑っていない。

「私は、あの子が生まれてすぐに交通事故に巻き込まれて死んでしまいました。最後に思ったこと、それは、『あの子の成長を見守りたい』だったそうです」

< 98 / 264 >

この作品をシェア

pagetop