帰宅部全国大会

緊張して手が震える。淵ギリギリまで淹れていたら間違いなく溢していた。


別にやましいことを考えて手が震えているわけじゃない。多少はあるけど。


俺が緊張しているのは、これから先輩に俺の想いを伝えるため。


大会中必死に考えて生み出した、俺の答えを。


「話とはなんだ? わざわざ皐月が外れている時を狙うとは、よほど重大なこと見受けるが」


「あ、はい」


一口だけコーヒーを飲んで、カップをテーブルに置く。


小さく深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、真っ直ぐ先輩の瞳を見つめた。


が、ちょっとだけ逸らした。直視するのは恥ずかしすぎる!


「この前俺の過去を話した時、先輩『そろそろ自分の帰宅道を見つけてみたらどうだ?』って言ったじゃないですか」


「そうだな」


「そんで俺、あの後自分なりに考えて。でも正直よくわかんなくて。でも考えて……」
< 255 / 263 >

この作品をシェア

pagetop