帰宅部全国大会

いざ言葉にしようとすると、口が上手く廻らない。


だけどこの想いだけは伝わるようにと願いながら、俺は言葉を紡いでいく。


「俺には帰る家があります。けど家族がいない。それが寂しくて、一人ぼっちになるのが恐くて、友人の家に上がり込んで……。
本当の家族ではないけど、結構楽しいんです。あいつん家。
くだらないバラエティを一緒に見て、洗い物手伝えって叱られて、『嗚呼、これが家族団らんってやつなのかぁ』って、落ち着くっていうか懐かしくて、めっちゃ楽しいんです。
家族になれないけど、ここが俺の帰る場所なんだって。そう思ったんです。けど……」


俺は言う。


「父さんは、本当に一人ぼっちなんだって気付いたんです。異国の地で、塀の中で不自由な生活を強いられて、親戚や仲間達にも半ば見捨てられて。一人ぼっちなんだって。
自業自得だってことはわかってるんです。人として間違ったことをしたんだから、罪を継ぐなわなければならないし、皆離れて行くのも仕方なのないことだってことも。
俺だって許したつもりはないし、多分一生許せない。馬鹿なことをした父さんも、それを止められなかった俺自身も……。」


でも、父さんの家族は俺一人なのだ。


たった一人の、血を分けた肉親なのだ。


「父さんが戻ってきても、一緒に暮らすつもりはなかったんです。お互い気まずいし、一緒にいても多分良いことなんて一つもないって。
だけどそれじゃあ、父さんには帰る場所がない。塀の外に出て、家に戻ってきても、そこに家族はいない。塀の中と変わらないって」
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