帰宅部全国大会

美しく帰宅するとポイントに加点されると先輩達は言っていたが、その“美しい帰宅”というのが未だにわからずにいた。


冬月先輩は「実戦で教える」と言ったきりで、何をすれば加点されるのか、何をしたら減点されるのか、今の俺は全くわかっていない。


迷子になったら……アウトだろうな。時間のロスにも繋がるし。


陸上部顔負けの美しいフォームで帰宅すれば……なんか違う気がする。


「そう思い悩むな。大会が始まれば自ずと理解してくる。それよりも……」


先輩の視線が鋭くなった。


あの時と同じ目付きだ。不良共に対峙した時の、狩人の眼。


右斜め前方にいる男子高校生。視線の先はその生徒に向けられていた。


さっぱりとしたショートヘアーの少年。どこかで見たことがあるブレザーだ。多分近くの高校だろう。


見た感じ俺より年上っぽい。


周囲が緊張と興奮でざわついている中、一人文庫本を読んでいる姿は異様なほど落ちついていて、初心者でないことだけは確かだ。
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