帰宅部全国大会

先輩体育系だし、その気になれば拳一つで問題解決ですもん。これ以上のスキルは必要ない。


「だが妨害は直帰の花だからな。どのような妨害をしてくるのか。そしてその妨害をどうやって回避するのか。数ある競技の中で直帰とフリーだけが残ったのは、こういった自由度の高さがあったからだ」


だがな海斗。と、先輩は続けた。


「妨害行動が気に入らないからといって、決して他人の帰宅道を否定してはいけない。そして自分の帰宅道を他人に押し付けてもいけない。
帰宅道はその人の人生でもある。他人の人生を否定出来るのは神だけだ。帰宅神と呼ばれる私達ですら、それだけは絶対に犯してはいけない」


「その人の人生……」


「君にもいずれ、君自身の帰宅道が見つかるはずだ。どのような道でも私は絶対に否定しないし、押し付けたりもしない。
だからゆっくり見つけるといい。帰宅とは人生。人は帰るために生きている。そのことを忘れなければ、君にも帰る意味が見つけられるはずだ」


―――先輩は俺のことを、どれくらい知っているんだろう。


先輩には俺の身の上話は話していないし、勿論皐月先輩や山田にも喋ってない。


知っているのは宙だけだ。先輩と宙が繋がっているとは思えない。
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