ビロードの口づけ
 掌を重ねて指を絡めたジンの手がキュッとクルミの手を握る。
 応えるようにクルミも握り返した。

 ジンの与える熱に翻弄されて身体の力が抜けていく。
 誘うようにうごめく舌に、いつしかクルミも応えていた。

 左手はクルミの手を握ったまま、ジンの右手はクルミの手を離れ、髪を撫で指の背で頬を撫でる。

 これまで無理矢理押さえつけられて強引に触られた時と違い、柔らかく優しく触れるしなやかな指に、クルミの中から抵抗の意思が抜け落ちていく。

 頬を撫で首筋を滑り、ジンの手は胸元のリボンをほどいてボタンを次々に外していった。
 寝間着の内側に侵入した手は、直接肌の上をゆっくりと滑っていく。
 唇はあご首筋肩と辿り、開かれた胸元へ下りていく。

 背中をゾクゾクと断続的に駆け抜ける快感に、吐息を漏らしながらも切なさに胸が痛む。
 閉じた目の縁から涙があふれてこぼれた。

 再びまぶたに口づけられ、クルミは薄く目を開く。
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