ビロードの口づけ
ジンはすかさず左手の爪を繰り出す。
ザキはそれを避けて間合いを取った。
ジンが立ち上がり、二人はしばし睨み合う。
風向きが変わり、夜風に乗って極上の甘い香りが辺りに漂い始めた。
ザキが突き出た鼻をヒクヒクさせて目を輝かせる。
「この香り……! 間違いない。五年前の女だ!」
ジンは内心舌打ちする。
(あのバカ! おとなしくしていろと言っておいたのに)
ザキが風上に向かって一歩踏み出した時、一発の銃声が響いた。
どうやらザキの咆哮に気付いた屋敷の人間が、獣を牽制するために撃ったようだ。
ザキは舌打ちして踵を返し、そのまま闇の中に走り去った。
程なく灯りを持ったコウに導かれ、猟銃を携えた警備員がやって来た。
「ジン様!」
血相を変えて駆け寄ってきた二人に、ジンはザキが走り去った闇を指差した。
「オレの事はいい。奴を追ってくれ」
警備員は頷いてコウから灯りを受け取り、闇の中に消えていった。
ザキはそれを避けて間合いを取った。
ジンが立ち上がり、二人はしばし睨み合う。
風向きが変わり、夜風に乗って極上の甘い香りが辺りに漂い始めた。
ザキが突き出た鼻をヒクヒクさせて目を輝かせる。
「この香り……! 間違いない。五年前の女だ!」
ジンは内心舌打ちする。
(あのバカ! おとなしくしていろと言っておいたのに)
ザキが風上に向かって一歩踏み出した時、一発の銃声が響いた。
どうやらザキの咆哮に気付いた屋敷の人間が、獣を牽制するために撃ったようだ。
ザキは舌打ちして踵を返し、そのまま闇の中に走り去った。
程なく灯りを持ったコウに導かれ、猟銃を携えた警備員がやって来た。
「ジン様!」
血相を変えて駆け寄ってきた二人に、ジンはザキが走り去った闇を指差した。
「オレの事はいい。奴を追ってくれ」
警備員は頷いてコウから灯りを受け取り、闇の中に消えていった。