ビロードの口づけ
ジンは少し先にある庭木の陰を見つめていた。
ドキリとして身体に緊張が走る。
また獣が侵入したのだろうか。
今宵も庭は闇に閉ざされていて、クルミにはかろうじて庭木の輪郭が見えるだけだ。
ジンの視線の先からガサガサと庭木の揺れる音がして、闇から分かたれた影がゆっくりとこちらに近づいてきた。
意外にもジンはそれを注視したまま動かない。
ジンの側までやって来たそれは、狼に似た獣だった。
窓から漏れた淡い光に照らされて、銀色の毛並みが艶やかに輝いている。
ゆったりと尾を振りながら、獣は窓に近づいてきた。
どうしてジンは動かないのだろう。
敵意は感じられないものの、また噛みつかれでもしたら——。
そう思ったクルミはジンの肩を掴んだ。
「ジン!」
「心配ない。こいつはオレの配下だ」
くぅんと少し不満げな声を漏らして、獣はジンの足を前足で軽く掻く。
そして勢いをつけて身体を起こし、両の前足を窓枠に乗せた。
ドキリとして身体に緊張が走る。
また獣が侵入したのだろうか。
今宵も庭は闇に閉ざされていて、クルミにはかろうじて庭木の輪郭が見えるだけだ。
ジンの視線の先からガサガサと庭木の揺れる音がして、闇から分かたれた影がゆっくりとこちらに近づいてきた。
意外にもジンはそれを注視したまま動かない。
ジンの側までやって来たそれは、狼に似た獣だった。
窓から漏れた淡い光に照らされて、銀色の毛並みが艶やかに輝いている。
ゆったりと尾を振りながら、獣は窓に近づいてきた。
どうしてジンは動かないのだろう。
敵意は感じられないものの、また噛みつかれでもしたら——。
そう思ったクルミはジンの肩を掴んだ。
「ジン!」
「心配ない。こいつはオレの配下だ」
くぅんと少し不満げな声を漏らして、獣はジンの足を前足で軽く掻く。
そして勢いをつけて身体を起こし、両の前足を窓枠に乗せた。