ビロードの口づけ
 なんだか完全な獣だった時よりも、余計に可愛く見える。



「ホント容赦ないね、君は。思い切り殺気を感じたよ」
「前に警告したはずだ」
「はいはい。それにしても、いつから私は君の配下になったんだか……」
「男が細かい事を気にするな」


 平然と会話を続ける二人に、クルミはおずおずと割って入った。


「あ、あの……ライ、ですよね?」


 ライは胸に手を当て、笑顔で恭しく頭を下げた。


「これはクルミ様。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。夜分遅くにこのような姿で失礼いたします。人型でなければ人の言葉が話せませんので」

「だったら最初から人の姿で来ればいいだろう」

「急いでたんだよ。人の姿じゃ無駄に時間がかかるからね」


 昨日の騒ぎで警備は厳しくなっている。
 獣の姿でよく侵入できたものだと思ったら、コウが手引きしたらしい。
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