ビロードの口づけ
「いいなぁ、あんな極上の女。私もあやかりたいものだ」
「オレを倒して獣王になればいい」

「だから権力に興味はないって。それより君が何をするのか見ている方が楽しそうだしね」


 ジンは口の端に笑みを浮かべただけで、何も言わず食事を口に運んだ。

 そのまま二人は黙々と食事を続ける。
 少ししてライが低い声で尋ねた。


「何を考えているのかな?」
「何が?」

「ザキの事だよ。獣王戦を挑むならともかく、仲間を集めて奇襲をかけようとしているのに泳がせておくなんて。君が一声かければケリはつくんじゃないかな」

「この間まではそのつもりだった。粛清するのは簡単だか、あいつをオレの手で屈服させてやりたくなった」


 ニヤリと笑うジンに、ライは目を丸くした。

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