ビロードの口づけ
19.帰順
 朝食を終えたライは、獣の姿でジンの部屋を出て行った。
 ザキの動向を探るという。
 ジンはクルミの側に戻り、いつも通りの日常を過ごす。
 さすがに昼間から襲撃してくるほど、ザキもバカではないようだ。

 夜になり、クルミの部屋の前にたたずむジンの元にライが戻ってきた。


「難航しているみたいだよ。あいつ、人望ないから」


 ライは笑いながら告げた。

 結局その夜、ザキの襲撃はなかった。

 新しい朝を迎えた。
 ザキが動くなら今夜に間違いない。
 明日の朝、夜明けと共に獣王の城で最高の女が決定される。

 ボディガードとしてのジンの契約期間は明日の夜明けまでとなっていた。

 城には毎日のように、最高の女候補の情報が続々と寄せられているらしい。
 探してくれた者には悪いが、それは五年前からクルミに決定していた。

 いずれその労力に対しては、何らかの形で報いようとジンは思っていた。
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