ビロードの口づけ
 ジンはフッと目を細め、クルミを寝室へ促した。


「絶対、側を離れるなよ」
「はい」


 寝室に入ったジンは、すぐさま着ているものを脱ぎ、獣の姿に戻った。
 ベッドの上に飛び乗り丸くなる。

 クルミはベッドの側まで椅子を持ってきて座った。
 ジンが外したネクタイを拾い、自分の手首とジンの前足を繋ぐ。
 そしてジンの頭から背中にかけて、ゆっくりと撫で始めた。

 クルミは獣の姿をしたジンを全く警戒しない。
 むしろ人の姿の方が警戒されている。
 普通は逆だろう。

 こうして身体を撫でられるのは、動物扱いされているような気がしないでもないが、クルミの手の感触は心地いい。

 無意識のうちに、ジンはのどを鳴らし始めた。
 そして程なく眠りの淵に沈んでいった。

 ハッとなってジンが目を開くと、もうすぐ昼食の時間だった。
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