ビロードの口づけ
 見るとベッドに縋るようにしてクルミが眠っている。

 一緒になって眠ってどうする。
 そう思ったジンは、クルミの頬をペロリと舐めた。

 クルミは反射的に悲鳴を上げて飛び起きた。
 人の姿になったジンは互いの手首を繋いだネクタイを掴んでクルミを引き寄せる。

 間近で見つめるクルミの目に緊張が走った。
 やはり人の姿の方が警戒されているようだ。


「あんたにこういう趣味があるとは意外だな」


 クルミは慌ててネクタイをほどき、ジンを突き放した。


「何か着て下さい」


 言われてみれば、確かに全裸だ。
 昼食の時間になれば、誰かがクルミを呼びに来る。
 人の姿で全裸はまずいだろう。
 ジンはベッドを下りて急いで服を身につけた。
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