ビロードの口づけ
 それを聞いてジンはホッと息をつく。
 殺人を犯したなら、ザキを屈服させる意味がない。


「救いようのないバカではなかったようだな」


 とにかくクルミの安全を確保するのが先決だ。
 また窓から顔を出して叫ばれても面倒だ。


「ポンタ、事情を説明して女たちを屋敷の中心に移動させろ。クルミと奥様が最優先だ。窓から遠ざけろ」

「わかりました。旦那様には?」
「オレから知らせる」


 コウは頷いて屋敷の中に駆け戻って行った。

 領主に知らせれば、銃を持った助っ人をすぐに手配してもらえるだろう。
 けれどザキを先に処分されては困る。


「向こうの規模は?」
「あいつを含めて五、六ってとこかな? いずれ劣らぬ筋肉精鋭部隊だよ」

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