ビロードの口づけ
 クルミからのキスを受け取り、ジンは部屋の窓を閉じた。
 辺りは再び静けさに包まれる。

 少しして闇の中に小さな二つの光が見えた。
 金の光はまっすぐにジンを見つめている。
 極上の香りに導かれたザキの目だ。
 後ろにはいくつかの赤い光を従えていた。

 薄明かりの中に現れたザキは、全身に敵意をみなぎらせてジンを見据えた。
 ところがザキとは対照的に、後ろに従う者たちはジンの姿を目にして一様にうろたえている。
 後ろのひとりがコソコソとザキに問いかけた。


「おい、ザキ。おまえが言ってた気に入らない奴ってジンの事か?」
「あぁ」


 平然と返すザキに、後ろにいる四人は一層うろたえた。


「冗談じゃない。獣王が相手だとは聞いてないぞ」
「勝手に女と交わっているって、獣王なら問題ないだろう」

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