ビロードの口づけ
 益々顔を歪めて睨むザキに、ジンは静かに問いかけた。


「おまえはどうする? 下りないのか?」
「ふざけるな!」


 ジンは一呼吸置いて、ザキに尋ねた。


「おまえはどうして獣王になりたいんだ? 掟に縛られない自由が欲しいだけか?」


 何も言わずに睨み付けるザキを見つめて、ジンは続ける。


「それとも皆を従えて頂点に立ちたいだけか? 何も目的がないなら三日と持たないぞ。上辺だけの言葉や力でねじ伏せても誰も従わない。今、思い知っただろう?」

「おまえには目的があるというのか?」

「ある。オレは人社会との自然な交流を目指している」


 ジンが人と関わる事を推し進めてきたのはそのためだ。
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