ビロードの口づけ
 それを見て兄が驚いたように声をかけた。


「ライ、どうして君が?」


 どうやら兄はライの正体を知らないようだ。
 ライが答えるより先に、父が厳しく制した。


「カイト、話は後だ。モモカ、君は下がってくれ。私がいいと言うまで誰もこの部屋に入れるな」

「かしこまりました」


 モモカが頭を下げて出て行くと、父はクルミにも厳しい目を向ける。


「クルミ、悪いがおまえも……」


 そう言いかけた時、ジンが遮った。


「いいえ。お嬢様にはぜひご同席願いたく存じます」

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