ビロードの口づけ
 ジンのようなボディガードを雇うのは、ある程度裕福な家庭だ。

 獣は決まって女を襲う。
 領内の女たちは獣よけの香水を常用しているが、それだけでは不安だと言う人たちがボディガードを雇う。

 ジンはこれまでも色々な女たちの警護をしてきたのだろう。

 少し気が楽になってクルミは気になっていたことを尋ねた。


「眼鏡なくても見えるんですか?」
「あれは視力矯正用じゃない」


 ジンの目は光を多く取り込むことができるらしい。
 そのため夜目は利くが昼の光は強すぎる。

 良家の子女を警護する事が多いので、色眼鏡だとガラが悪く見える。
 そのため見た目は普通の眼鏡をかけているのだという。

 クルミに対しては相変わらず、無遠慮で横柄で意地悪だが、仕事に対しては真面目に取り組んでいるようだ。
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