ビロードの口づけ
父はひとつ嘆息してクルミに告げた。
「クルミ、おまえが決めなさい」
ジンに要求され父が黙って従うままに、彼の元へ行けばよいと考えていた。
いきなり自分に選択権が委ねられ、クルミは困惑する。
黙って視線を泳がせているクルミに兄が言う。
「クルミ、家のためとか考えなくていいから。君が望む通りに決めてかまわないんだよ」
縋るような目に見つめられ、チクリと胸が痛んだ。
答など最初から決まっているのに。
兄から目を逸らし、ジンに視線を移す。
彼は眼鏡の奥から穏やかな、けれど確信に満ちた目でクルミを静かに見つめていた。
やっぱり意地悪だ。
クルミが拒絶しない事を確信していながら、あえてクルミ自身に選ばせる。
「クルミ、おまえが決めなさい」
ジンに要求され父が黙って従うままに、彼の元へ行けばよいと考えていた。
いきなり自分に選択権が委ねられ、クルミは困惑する。
黙って視線を泳がせているクルミに兄が言う。
「クルミ、家のためとか考えなくていいから。君が望む通りに決めてかまわないんだよ」
縋るような目に見つめられ、チクリと胸が痛んだ。
答など最初から決まっているのに。
兄から目を逸らし、ジンに視線を移す。
彼は眼鏡の奥から穏やかな、けれど確信に満ちた目でクルミを静かに見つめていた。
やっぱり意地悪だ。
クルミが拒絶しない事を確信していながら、あえてクルミ自身に選ばせる。