ビロードの口づけ
母にはまだジンの元へ行く事を話していない。
父から伝わっているかもしれないが、自分で伝えたかった。
それにジンに対する母の気持ちを確かめたいと思っていた。
本当は訊いてはいけない事なのかもしれないけれど——。
きれいに刈り込まれた低い庭木の通路を進む。
その先に四本の丸い柱に支えられた、三角屋根の白い東屋が見えてきた。
屋根の下に置かれた椅子のひとつに母が腰掛けている。
ゆったりとしたドレスを身にまとい、ひざの上には折り畳んだ白い日傘を乗せていた。
艶やかな金の髪を後ろで小さく丸めて、透き通るような白い肌は確かにいつもより幾分血色がいいようだ。
クルミと同じ緑の瞳は、右手の池をぼんやりと眺めていた。
普段の母はクルミの目にも美しく儚げで、あの日ジンの寝室で見た姿が幻だったのではないかとさえ思える。
「お母様、おかげんはいかがですか?」
クルミが声をかけると、母はこちらを向いてふわりと微笑んだ。
父から伝わっているかもしれないが、自分で伝えたかった。
それにジンに対する母の気持ちを確かめたいと思っていた。
本当は訊いてはいけない事なのかもしれないけれど——。
きれいに刈り込まれた低い庭木の通路を進む。
その先に四本の丸い柱に支えられた、三角屋根の白い東屋が見えてきた。
屋根の下に置かれた椅子のひとつに母が腰掛けている。
ゆったりとしたドレスを身にまとい、ひざの上には折り畳んだ白い日傘を乗せていた。
艶やかな金の髪を後ろで小さく丸めて、透き通るような白い肌は確かにいつもより幾分血色がいいようだ。
クルミと同じ緑の瞳は、右手の池をぼんやりと眺めていた。
普段の母はクルミの目にも美しく儚げで、あの日ジンの寝室で見た姿が幻だったのではないかとさえ思える。
「お母様、おかげんはいかがですか?」
クルミが声をかけると、母はこちらを向いてふわりと微笑んだ。