ビロードの口づけ
「今日は随分いいわ。あの人が具合のいい時はなるべく外の空気に触れた方がいいって言ったからお散歩してたの」
母は父の言う事には従順で、反論する事すらクルミは目にした事がない。
病弱で寝込む事の多い母とはあまり話をした事がないが、父の話をする時の母はとても楽しげで幸せそうに見えた。
だからこそ、父への裏切りとも思えるあの日の姿が意外だった。
クルミは母の隣に腰掛けた。
母はクルミを見つめて穏やかに微笑む。
「あなたとお話をするのは久しぶりね」
「えぇ。もっと色々お話ししたいのに、私、ジンの元へ行く事になったの」
「そのようね。あの人から聞いたわ」
やはり父から知らされていたようだ。
あらかじめ知っていたからか、全く動揺する事なく母は祝福の言葉を口にする。
クルミが自ら望んでジンの元へ行く事も聞いているようだ。
母は父の言う事には従順で、反論する事すらクルミは目にした事がない。
病弱で寝込む事の多い母とはあまり話をした事がないが、父の話をする時の母はとても楽しげで幸せそうに見えた。
だからこそ、父への裏切りとも思えるあの日の姿が意外だった。
クルミは母の隣に腰掛けた。
母はクルミを見つめて穏やかに微笑む。
「あなたとお話をするのは久しぶりね」
「えぇ。もっと色々お話ししたいのに、私、ジンの元へ行く事になったの」
「そのようね。あの人から聞いたわ」
やはり父から知らされていたようだ。
あらかじめ知っていたからか、全く動揺する事なく母は祝福の言葉を口にする。
クルミが自ら望んでジンの元へ行く事も聞いているようだ。