ビロードの口づけ
「私、ピアスはつけた事ないんですけど」
「オレがつけてやる。向こうを向け」


 言われるままに身体をひねる。
 左の耳たぶにチクリとピアスの先端が当てられた。

 耳元でジンが囁く。


「少し痛いぞ」


 その直後、耳たぶにズキンと激痛が走った。
 痛みは脈に合わせてズキズキと断続的に繰り返す。
 少しどころではない痛みに、無意識に涙が滲んできた。


「痛い……」


 ジンはクルミを抱き寄せ、ピアスごと耳たぶを口に含んだ。
 ピアスと耳たぶの隙間に舌を差し入れ、丹念に傷口を舐める。

 やがて痛みは遠退き、背筋にゾクゾクと別の感覚が走り始めた。
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