ビロードの口づけ
 ジンの唇はいつの間にか耳たぶから首筋に移動していた。

 首筋を挟むように唇ではむはむされた後、ザラつく舌が首筋を下から上へ大きくひと舐めした。


「きゃっ!」


 思わず声を上げて身を固くする。
 耳元でジンが意地悪に囁いた。


「やはりあんたの血は極上だな。続きは城へ帰ってからだ。今夜は眠れると思うなよ」


 クルミのまぶたに口づけ、ちゃっかり涙をぬぐったジンは、地面に両手をついて変化を始めた。


「走るから、オレの背に跨がってしっかり掴まっていろよ」


 獣の姿でどこを走って屋敷から出て行くつもりだろうか。
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